若い頃、メキシコの代表的建築家の一人、ルイス・バラガンの自宅の写真を見たことがあります。吹き抜けの居間に、高さ5mはあろうかという嵌め殺しのガラス窓が庭に面して設けられているのですが、不思議なことにカーテンが室内ではなく外部に吊るされています。だからカーテンの開け閉めのためには、別の出入り口を利用しなければなりません。かつてモダニズムの旗手と呼ばれ、近代合理主義の申し子とでもいうべきバラガンが、なぜこのような設計をしたのかと、ずっと不思議に思っていました。その理由が、ガラスに気付かず激突死する小鳥を救うためだと知ったのは数年前のことです。それ以来、バラガンのカーテンは私にとって建築と自然環境とのありようを考える際の指針となっています。